●ムベ (平成8年8月号掲載)

福島市渡利・花見山のムベ

 春、アケビが咲くころ、各地の家の垣根や棚にアケビに似て小葉の数が5〜7枚の蔓植物が花を咲かせる。ムベである。アケビが冬に葉を落とすのに対し、ムベは常緑である。そのためトキワアケビの別名もある。果実はアケビに似て卵円形で紫色に熟すが、アケビのように開裂しない。

 ムベは古名でウベと言われた。アケビは実の開いたウベの意味のアケウベからアケビになったものと言われている。実は甘く、昔は珍品として珍重され、藁であんだ篭に入れて朝廷に贈られた。それを苞苴(おほむべ)と言ったことからウベと略され、現在はムベと呼ばれている。

 小葉は普通6枚が多いので学名の小種名はhexaphylla(6葉の、の意味) と命名されている。葉の数でアケビと区別できるが5小葉の場合はアケビと同じなので、その時は小葉の先端を見ればよい。アケビの小葉の先端は円形かやや凹形になるのに対し、ムベのそれは鋭頭である。

 ムベやアケビのように葉が手のひら状に5〜7枚の小葉に分かれるものを掌状複葉と呼んでいる。アケビの仲間に小葉が3枚のものがあり、ミツバアケビという。アケビ同様、全国の山野に普通に分布している。

 花は春に新葉の腋から総状の花穂を下垂させる。アケビの花は紫色であるが、ムベは白色または淡紅紫色の小花を3〜7個付ける。雌雄同株で雄花は長さ13mm位であるが、雌花はそれよりやや大きく、数は雄花よりやや少ない。

 常緑であり花も可憐で美しいことから垣根や棚作りに栽培されている。今年は、栽培品では福島市渡利の花見山、いわき市フラワーセンター、郷ケ丘の民家の垣根で開花中のものを見ることができた。しかし暖地性の種であるため、東北地方では自生のものは少なく、いわき市内では小川町、植田の海岸林で自生のものが確認されている。現在知られている北限地は双葉郡富岡町である。

 (文:福島県植物研究会会員・理学博士
/湯澤陽一)
(写真:いわき市/紺野七美)

ジャケツイバラ (平成8年9月号掲載)

 梅雨に入る頃、いわき市内の山麓や沢沿いに黄色でルピナス状に直立総状に花をつけるツル性の落葉低木が目につく。いわき市ではなぜか小川沿いに多く、渓流沿いに歩いていると時々上流から散った黄色の花が流れてくるのに出合う。樹木なのでマメ科の植物とは思えないが、一つ一つの花をよく見るとエンドウの花のような蝶形花でマメ科の一員であると分かる。

 オシベが赤色なので花の黄色とのコントラストが美しく、遠くからでもよく目立つ。茎から枝まで荒い逆刺があり、うっかりすると皮膚を傷付ける。葉はニセアカシヤの葉に似るが、葉柄にも葉軸にも著しい逆刺がある。和名は蛇穴いばらの意で、ヘビの穴にこの枝を差し込んでヘビ除けに用いたことから名付けられたもの。

 いわき市内では数カ所の産地が知られているが、相双地区に入ると激減する。かつては生育の北限は福島県とされていたが、十年はど前、宮城県からも発見された。そのいきさつを仙台市野草園の園長である管野邦夫氏が“鬼に金棒の記”と題して宮城植物の会の機関誌に書いている。

 それによれば、ある日植物園に鉄砲撃ちの加藤さんと言う方が、鬼の金棒はかくやと思わせる直径5cmくらいの荒いトゲのある棒を持ってきて、木の名を尋ねたと言う。図鑑を見ても分からないので東北大学に持っていき、はじめてジャケツイバラと同定してもらったと書いている。加藤さんに案内してもらった産地は、福島県と宮城県との境の沢であるらしい。

 加藤さんは、福島県側でキジを撃ったら、撃たれたキジは宮城県側の斜面に落ちたと言う。そのキジを追って行った愛犬が加藤さんを待っていた所がジャケツイバラの木の下であったので、これは何の木だろうと植物園に持ち込み、宮城県初記録となったものである。

 分布が宮城県まで北上したと言っても、境の小川を越えてほんの少しの距離である。地元ではこの木を方言でサルトリイバラと呼んでいる。

いわき市四倉町のジャケツイバラ

 (文と写真:福島県植物研究会会員・理学博士
/湯澤陽一)

 

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